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大阪高等裁判所 平成11年(ラ)843号 決定 1999年9月30日

主文

1  本件抗告をいずれも棄却する。

2  抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

第1  抗告の趣旨及び理由

抗告人は、大阪地方裁判所が平成11年9月2日なした引渡命令を取り消すとの裁判を求め、その理由として、抗告人らは、本件競売物件(以下「本件建物」という)の前所有者である中央エンタープライズ株式会社と佐川嘉一(以下「佐川」という)との間で平成10年6月23日更新された賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という)に基づき、本件建物の各部分を占有しているものであるが、本件賃貸借契約は本件建物に対する抵当権設定(平成5年5月7日登記)に遅れて平成7年6月23日に締結されたもので、その後本件基本事件の差押え(差押え登記は平成10年12月14日になされている)に先立って前記のとおり平成10年6月23日に更新されているから、その期間が満了する平成13年6月22日まで買受人に対抗し得るのであって、これを無視した原決定は取消しを免れない旨主張した。

第2  当裁判所の判断

1  記録によれば、本件建物について、最先順位の担保権が設定されたのは平成5年5月7日受付の株式会社住宅ローンサービスの根抵当権(本件基本事件の申立債権)であるところ、本件基本事件の差押えに先立つ平成7年3月9日に大阪市中央区役所の差押え及び平成10年4月20日に京都市理財局の参加差押えがなされている。このように滞納処分による差押えが優先していて、その滞納処分に係る公租公課も競売事件で同時に配当がなされる場合(具体的に配当があるか否かを問わない)には、滞納処分の差押え時点で換価手続が開始されたと解すべきである。なお、このことは、滞納処分による換価手続について引渡命令と同様の手続が存在するか否かとは関係がない。抗告人らの主張に係る本件賃貸借契約は前記の根抵当権設定登記に遅れるものであるから、短期賃貸借としての限度でのみ買受人に対抗し得るものであるところ、滞納処分の差押え後になされた平成10年の更新は、具体的な換価手続開始後の更新として買受人に対抗し得ない結果、佐川の賃借権は買受人に対抗し得ないこととなる(大阪高等裁判所平成10年11月25日決定・金融商事判例1061-26参照)。

2  よって、抗告人らの本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

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